短歌を通して、日常が豊かになることを伝えたい
高田さんが短歌を通して叶えたいこと、それは「一人ひとりの想いが尊重され、互いを想いあい、心豊かに暮らす」こと。
近年SNSはますます普及し、併せて言葉のやり取りも「とにかく早く」「とりあえず返す」そんな傾向が見られます。「自分が本当に伝えたいことは何なのか、相手は何を思っているのか。深く考えずに言葉を発する人が増えている」と高田さんは言います。
一方、短歌は三十一文字と文字数が限られているので、そのなかで「自分が伝えたいことは何か?どんな言葉だと相手に伝わるか?」を考えねばなりません。そのプロセスこそが、自分や相手の気持ちを考えるきっかけになります。
短歌を通して言葉を丁寧に扱う人が増え、気持ちを丁寧に考える文化が広がることで、心豊かに暮らせる世界になる。そんな思いが、高田さんが短歌の普及活動をされる背景にあります。
「自分の活動の社会的価値」を言語化できる広報塾
広報塾に参加される前からプレスリリースを書かれていた高田さんですが、「自分の活動にどのような社会的価値があるのかを十分に客観視できず、リリースの的を絞ることが難しい」という悩みがありました。
「自分が短歌のどのようなところに惹かれて、その魅力をどのように伝えれば、少しでも多くの人に届くのか。広報塾では、当たり前のようで、深掘りしてこなかった“私の活動ならではの社会的価値”について整理する必要性に気づかされました。一人ではなかなか自分を客観視するのは難しくて。でも、神崎さんや他の塾生の方とのやり取りを通して“自分らしい価値”に少しずつ気づいていくことができました。
塾はワンツーマンではなく、複数のメンバーが参加する形式でした。異なる業種の方々と意見を交わすことが、客観的な視点のヒントにもなったと感じています」
ここで整理された「活動の社会的な意義」は、」高田さんのウェブサイトのプロフィール欄に「約束」として掲載されています。
リリース作成を自走できるように
入塾中、ほぼ毎月リリース発信をされていた高田さん。メディアの反響はとてもよく、特に新聞からの反響が大きかったとのこと。そのときに記事を書かれた記者の方とは、「今でもリリースを発信するときなどはお伝えしている」と継続的な関係を築かれています。
リリース作成のサポートに関しては、「自分が書いたものに対してコメントをいただけるので、そのまま身になります。今もリリースを出すときは、広報塾で教わったトレンドや、社会性、何に的を絞るかなどを念頭に置きながら書いています」
高田さんは塾を卒業されてからリリース作成を自走できるようになり、新聞だけでなく、ラジオやテレビ、女性ファッション誌など、幅広いメディアでその活動が取り上げられています。
価値に共感する人が集まり、裾野が広がった短歌の活動
現在、20代から70代という幅広い年代の生徒さんが集まる、高田さん主宰の短歌教室ひつじ。まだまだ年配の方が嗜む趣味というイメージの強い短歌ですが、短歌教室ひつじの生徒さんは比較的若い方が多く、高田さんはコロナ禍で教室をすべてオンラインへ切り替えられました。すると、国内のみならず、海外から参加される方も現れ、その裾野は広がりをみせているとのこと。
「短歌は、たとえば小さな子どものお母さんなら、家族でディズニーランドに行ったというような大きい出来事はもちろん、子どもの爪を切った、お弁当をつくったなど、写真にも残らないような、でも本人にとってはかけがえのない一瞬を切り取り、そのときの気持ちを永遠に残すことができます。
短歌を始めると、“これも、あれも短歌になる!”という歌のタネが、何てことのない毎日のなかにたくさんあることに気づかされます。見慣れた景色も、見方を変えると新しい発見がある。短歌は日常を豊かにしてくれる、自分の心の味方なんです。
そんなことを、短歌教室やワークショップなどを通してこれからも伝えていきたいです。短歌はエッセイや日記よりも短いので、慌ただしいなかでも隙間時間につくることができる。気軽にSNSに投稿できるというのも、時代に合っているなと感じています。」
今後は、もっと若い世代の人にも短歌に触れ、親しんでもらう機会をつくりたいと考える高田さん。今後できたらいいな、と思い描かれているのは「少女漫画の登場人物の心情を、読者に短歌で詠んでもらう」という企画。
「小学生の時から少女漫画が大好きで。少女漫画の“モノローグ”から、幸せや喜び、せつなさなど、さまざまな感情をリズムに乗せて紡ぐ楽しさを教わりました。それが私の短歌をつくる原点になっています。
少女漫画の主人公の心情を、読者の女の子たちに短歌で詠んでもらい、『自分にもモノローグが書けた!言葉っておもしろい!』って感じてもらえたらうれしいです。愛する少女漫画に少しは恩返しできるかな。」
抱えると重みがふふふふふくらますふろくを包みふくらむりぼん(『ライナスの毛布』書肆侃侃房)
高田さんのように個人で活動される方や、広報をチームではなく一人で担っている中小企業の場合、「自社らしさ」「自社の社会的価値」「それをどう社会へ伝えたらいいか」などを話し合う相手がおらず、自社を客観視しにくいという問題を抱えやすいです。
広報塾ではプレスリリースの書き方を身につけられるのはもちろん、対話を通してあらゆる広報活動の土台となる「自社の社会的意義」を深掘りし整理することができる、そんなお声を頻繁にいただきます。
「自社の社会的意義」を考え、発信し続けること―――。それは価値が複雑かつ多様化する社会で、より一層重要になってきている。高田さんの事例から、そんなことを感じました。
掲載日:2023/2/1