地域を広報で元気に![広報コンサルティング・プレスリリース作成・広報研修・広報セミナー]
お客様の声

VOL.10

イラスト
  1. トップ
  2. PR事例
  3. 老舗印刷会社が学生と創る新しい紙製品 社内外に“伝わる”ことで活性化する新規事業
写真
大阪書籍印刷株式会社
畠中さん 西村さん
明治42年に教科書の編集・出版で創業し、分社化を経て現在は書籍印刷事業を軸とする大阪書籍印刷株式会社。既存マーケットの縮小を受け、新たな柱となる事業を作るために産学連携で紙文具の商品を次々に開発しています。しかし、これらの商品や取り組みは、世に知られなければ、売り上げや企業価値向上への影響は限定的です。そこで同社では、学生との連携だけでなく、クラウドファンディングの活用や、デザイン、商品写真撮影、リリース作成などで外部の専門家を積極的に活用。立場やスキルが異なる多様性の中から生まれるユニークな商品と広報戦略で注目を引き、新聞や文具雑誌、ウェブメディアなど多くの媒体で記事掲載されました。新規事業への社内の意識も変化し、老舗企業ならではの保守的な風土と、新たなことを楽しむ風土がバランス良く混じる組織へと変わりつつあります。

企画開発も広報も自前主義にこだわらず外部との連携へ

少子化やデジタル化が進み、印刷業界はかつてないほどの苦境を迎えています。大阪書籍印刷も、既存のお客様から印刷の仕事をいただく受注ビジネスは減少。紙印刷物の新たな価値提案ができるメーカー機能を備えた企業への進化の途上にあります。営業部・企画開発チームの課長である畠中さんと同チームの西村さんは、新規事業の開発と兼任しながら、積極的な広報活動を推進。会社の認知向上や新規顧客の開拓に力を入れています。

2021年9月には自社企画商品を扱うECサイト「archshop」を立ち上げ、もともとSNSの運用について理解のあった西村さんがX(旧Twitter)アカウントを担当。会社としての情報発信体制を整えました。しかし、Xのフォロワー数は順調に伸びたものの、ECサイトのアクセスでは苦戦。売り上げには、なかなかつながりませんでした。そんな折に、「プレスリリースの作成をお願いできる大阪のPR会社をネット検索で探したところ、PRリンクさんを見つけました」と、西村さんは当社との出会いを語ります。

一方で、根本的な課題である「商品の魅力を増すこと」においても、外部との連携に舵を切りました。きっかけは、広報のコミュニティ型勉強会「みんなで広報会議」です。会議では、参加各社の事例を共有して広報活動の引き出しを増やす取り組みを実施していますが、その共有は時に広報活動にとどまらず事業活動にも及びます。新規事業の育成や、商品開発の進め方も企業の共通課題。大阪書籍印刷は、会議に参加する他社広報から「Sカレ(Student Innovation College)」の存在を教えてもらったそうです。
「Sカレ」とは、全国の大学3年生がゼミ単位で参加し、企業からのテーマをもとに商品を企画する取り組みです。紙や紙印刷物を主体とした社会で育った人間ではなく、紙とデジタルが混在する中で生きてきた世代は、惰性で紙を使い続けることはありません。「デジタルの方が良いモノ」「紙でもいいモノ」「紙の方がいいモノ」などを、利便性や面白さの観点で選別できるフラットな感覚を持ち、新たなニーズを考える柔軟な思考も備えているのが現代の学生です。従来思考の延長線ではない発想と企画を期待し、同社もSカレに参加することにしました。
写真

新聞や文具雑誌、ウェブメディア、ラジオなど幅広いメディアが紹介

Sカレでは、「未来が描けるノートづくり」をテーマに、デジタル社会が進んでも使いたいと思える将来性のある紙製ノートを募集しました。2023年9月には、近畿大学の学生の案をもとに、「しおり」と「ノート」を合体させ、読書で得た学びを記して日常生活で活かすための新たなツール「Shiori Note」を発売。また、駒澤大学学生とも翌年3月に、自分の好きなものや言葉、出来事を五十音順で記録して集め、折に触れ読み返すタイムカプセルのようなノート「Jishoru(じしょる)」を商品化し、新聞や文具雑誌、ウェブメディア、ラジオなど幅広いメディアで紹介されました。
写真
この成果には、自社での地道な努力はもちろんのこと、自前主義にこだわらず「外部の専門家を活用したことも大きかった」と西村さん、畠中さんは分析します。新規事業を始めた当初は、売り上げ実績が上がらず苦戦。「企画やデザイン、売り方などBtoCのメーカーがあたりまえにやっていることを、私たちは何もしていないし、知ってもいなかった」と、当時を振り返ります。このため大阪書籍印刷は、学生の発想を企画で取り入れるだけでなく、フリーランスのプロダクトデザイナーと契約。また、PRリンクが作成したリリースや、ECサイト「Makuake」での先行販売を広報で活用しました。
写真
「リリースを読むメディアや、サイトを見る消費者の心に届けるための表現において、プロの力はやはり大きい」と西村さんは語ります。この商品は消費者に何を与えられるのか?を客観的な目で見て文章に落とし込み、訴求力を高める多様な表現を、大阪書籍印刷は自社のサイトやSNSでも手本にして用いたとのことでした。

Jishoru のMakuakeでの先行販売は、10万円の目標に対し、1588%の約158万円を達成しました。きめ細かな発信で増やしていたXのフォロワー数は既に2万超。社内からの発信と、外部の力を活用した発信をうまくかみ合わせ、Makuakeの流入分析も活用し、Instagramなどで効果的な広告を打つことで、売り上げにつなげました。

丹念な社内広報と数値の成果で社内も変わる

一見して厳しい状況に見える印刷業界ですが、視点を変えて探していけばニッチなマーケットがまだまだ隠れていることが、大阪書籍印刷の取り組みから気づかされます。成功体験を経て畠中さんは「目指したいものが見えた」と語り、「人は楽しく書けるものを求めている」と確かな手応えを感じています。その雰囲気は社内も同様。新規事業が数字として結果に表れ始めたことで、予算稟議や社内協力の面で変化がありました。

企業の新規事業では、当初は少ない予算と人手でスタートするのが一般的。しかも、いつ芽が出るかわからない中で、担当者が焦りや迷いを感じることは珍しくありません。西村さんも「主力事業で会社を支える人たちから、遊んでいる風に見えるのではないか? 忙しい業務の合間に協力を要請していいのか?と引け目を感じることもあった」ことを明かします。しかし成果を得たことで「やりたいことや、予算が必要なことを提案しやすくなったし、協力もお願いしやすくなりました」とホッとした表情を見せます。

実は、ここでも重要なのは広報。西村さんはこれまで、メディア掲載や売り上げの状況を丹念に、社内掲示板やLINE WORKSで社員に発信し続けてきました。広報は社外だけでなく、社内に対しても欠かせないものなのです。

コミュニケーションをとることや、数値を正確に伝えることは仕事の基本でもあります。お客様や社員、連携する外部の企業や学生、フリーランスなど、多様な関係者とコミュニケーションをとり、伝える努力を欠かさない2人の姿勢は、これからさらに多くの人を巻き込んで新規事業の芽を増やす未来図を連想させ、期待せずにはいられません。
掲載日:2024/6/19

お問い合わせ

問い合わせ